うつ病、産後のうつ、
パニック障害
うつ病
何となく気分が落ち込んでいる、仕事や好きなこともやる気が起きないほどの不調は誰もが経験するものです。通常は数日で回復してまた以前のような状態に戻りますが、症状が2週間以上経っても続いてみられるようであればうつ病の可能性があります。
うつ病は男性に比べ女性に多くみられる病気です。その原因はまだよく分かっていませんが、月経周期や妊娠など、女性特有のホルモンの変動が関係していると考えられています。また、近年女性の社会進出が著しく、仕事のストレスを多く受けるようになった上に、結婚、妊娠、出産、子育て、親の介護などのライフイベントを通して女性が社会や家庭から受けるストレスもうつ病を引き起こす一つの原因になっていると考えられます。
主な症状
うつ病では主に「精神症状」と「身体症状」があらわれます。
精神症状
抑うつ気分
憂鬱、悲しい、希望がない、落ち込むなどつらい気分がずっと続いてしまい、仕事や勉強が出来なくなってしまうほどの状態になります。
不安感
何かに関して不安に感じることは誰もがあることですが、うつ病になるとより不安を感じてしまい、焦ってイライラするという症状もよくみられます。
集中力、意欲の低下
意欲がわかずいつもやっていたことをするのが億劫になりがちで疲れやだるさを感じることも多く、何かをする時にも普段より時間がかかるようになってしまいます。
自責の念
誰かから頼まれたことができず、「こんな自分で申し訳ない」と思ったり、いつも出来ていたことが出来なくなって、「もう私なんて必要ない人間だ」と思ってしまうことがあります。 また、ちょっとした出来事で自分のせいだと考えがちになることもあります。
希死念慮
つらい気分が続き、いつもどおりに出来ていたことが出来なくなって焦りが生まれ、次第に自分を責めて、「もうここからいなくなりたい」、「遠くへいきたい」などこんな状態から離れたいと思い、つらさから逃れて早く楽になりたいという気持ちの悪循環がこのような気持ちを生み出してしまいます。
身体症状
睡眠障害
うつ病では睡眠障害が症状の中でも顕著にあらわれます。また、睡眠障害といっても「不眠」だけでなく、どんなに寝ても疲れがとれず、いくらでも寝てしまう、「過眠」にもなることがあります。
食欲低下
食欲がなくなっても無理をして食べている方もいらっしゃいますが、そのように食べても味気が無く、おいしいと感じられなくなります。「砂をかんでいるよう」、「味がしない」などと感じる方もいらっしゃいます。
倦怠感
疲れるようなことはしていないのにとても疲れたり、疲れが続いて最低限の仕事さえ努力をしないと出来なくなることがあります。また、仕事だけでなく日常生活でさえつらくなることもあります。
からだの痛み
頭痛、肩こり、関節が痛いなどの症状はうつ病でなくてもあらわれることがありますので、これらの症状がある場合は一度病院に行ってみて他の病気が隠れていないか確認する必要があります。
ですが、症状が長く続いて検査をしても何も異常がなく、抑うつ気分や意欲の低下などの精神症状とともにからだの痛みや重さが現れている場合はうつ病の可能性があります。
動悸、便秘、下痢
うつ病により自律神経が乱れ、体の中の調整がうまく働かなくなってしまうことであらわれる症状です。上記の他にめまいや頻脈、胃の不快感などがあります。
治療方法
うつ病と診断された場合は一般的に抗うつ薬による薬物療法、精神療法を行います。 抗うつ薬にはSSRI、SNRI、NaSSA、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬などがあります。 患者様の症状に応じた薬を選択していきます。抗不安薬、睡眠薬を併用することもあります。
同時に環境調整、休職、休学などが必要であれば検討していきます。
産後のうつ
産後に発症した初発のうつ病のことを産後うつ病といいます。
出産後は、体内のホルモンバランスが急激に変化することと、子供が出来たことへの責任や不安感から精神的に不安定になりやすい時期です。特に産後、1ヶ月以内にうつ病にかかりやすいとされています。周囲の方が温かく見守りながら心身の疲労、育児、家事などの負担を軽減するために協力することが必要です。必要に応じて、うつ病に準ずる薬物療法を行っていきます。
マタニティーブルーとの違い
マタニティーブルーとは産後、精神的に不安定になり、ちょっとしたことで怒ってしまったり、泣いてしまったりという状態で、一見産後のうつと同じだと解釈されかねませんが、病気ではなく個人差はありますが正常な反応で、多少の不安が続いても数日で自然と解消していきます。
それに対し、産後のうつは不安状態が解消されずに悪化してしまう病気です。
産後うつチェックリスト
気分が落ち込んで涙が出てくる
考えがまとまらず、家事の段取りができない
先のことを考えて不安になる
育児が大変、きちんと育てられるか不安に感じる
里帰り出産から自宅に帰ることが不安に感じる
何事も自分が悪いと考えてしまう
自分ばかり大変だとパートナーに怒りを感じる
メイクをする気が起きない
洋服やアクセサリーを欲しいと感じない
眠れない
食欲がない
疲れやすい
イライラして落ち着かない
他人との交流を面倒に感じる
自分の好きなことに興味がわかない
頭痛、吐き気、下痢や便秘等の身体の症状がある
パニック障害
パニック障害では、思いもよらないときに突然、息切れや息苦しさ、動悸、めまいなどがあらわれ、強い不安を伴うパニック発作を生じます。パニック発作が繰り返しみられるうちに発作が生じることに対する”予期不安”や発作が生じる状況に対する”広場恐怖”を感じるようになり、日常生活に支障をきたすようになってしまいます。進行するとうつ状態やうつ病になってしまう場合もあります。
主な症状
パニック発作
パニック発作はパニック障害の中心となる症状です。何度も繰り返しあらわれ、発作が生じるとこのまま死んでしまうのではないかと強い不安を感じることが多いのですが、実際には10分程度で強い症状は治まります。
自律神経刺激による症状
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動悸、脈が速くなる
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発汗
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振戦、震え
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口渇
胸部、腹部の症状
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呼吸困難
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窒息感
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胸部の疼痛や不快感
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人混みの中での腹痛
精神症状に関する症状
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めまい、ふらふらする、気が遠くなる
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頭がくらくらする
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物事に現実味がない、自分がここにいる感じがしない
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死ぬのではないかという恐怖
全身的な症状
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紅潮または寒気
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しびれまたはちくちくする痛みの感覚
<予期不安>
パニック発作を繰り返していくうちに、また発作が起きるのではないかという強い不安「予期不安」を感じるようになり、日常生活の大きな妨げになります。
<広場恐怖症>
パニック発作を経験すると、発作を起こした状況が怖く感じるようになってしまいます。「広場恐怖」を生じるとそれらの状況を避けるようになってしまいますので(回避行動)、日常の行動範囲が狭くなり、日常生活の大きな妨げになります。
治療方法
まずは、パニック発作を抑えるために薬物療法で治療をすすめていくのが一般的です。
主にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、抗不安薬などで治療をしていきます。 パニック発作がコントロールされ落ち着いてきたら、薬物療法を継続しながら予期不安や広場恐怖を克服していく治療をすすめていきます。