社交不安障害、睡眠障害、強迫性障害、更年期の気分障害
社交不安障害
大勢の方の前で話しをしたり、初対面の方と会う時、誰もが緊張するものです。しかし、人前で恥ずかしい思いをするのではないかと異常なほどに不安を抱えてしまい、生活に支障をきたしてしまうのが社会不安障害です。
そのような場面に遭遇すると紅潮、発汗、どもり、下痢、腹痛などの症状がみられます。このような症状が続くとまた起こるのではないかと不安となり人が集まる場所を避けるようになります。そうなると学業や仕事などの社会生活に支障をきたしてしまいます。
主な症状
人前での発言や食事など緊張感のある現場に立った時に顔の赤面、手足の震え、動悸、息切れ、頭の中が真っ白になってしまう、下痢、吐き気、頻繁にトイレに行きたくなる、悪心、口渇などの症状がみられます。
治療方法
社交不安障害の治療としては薬物療法、精神療法があり、相互的に治療していきます。
薬物療法としてはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や抗不安薬などで治療し、不安、緊張感を軽減し、身体症状の緩和を図ります。
睡眠障害
不眠症とは実際の睡眠時間の長短にかかわらず睡眠不足感が続く、日常生活に支障をきたす状態のことをいいます。 睡眠時間は個人差が大きく、短い睡眠時間で足りる方や8時間以上眠らないとダメな方もいます。また、加齢とともに眠りが浅くなったり朝早く目が覚める傾向にあります。
不眠の原因には精神生理学的要因(時差のある地域への飛行機旅行、精神的ショック、外科的手術のための入院など)による不眠、精神障害に伴う不眠、薬物や飲酒による不眠、身体疾患に伴う不眠などがあります。
睡眠障害(不眠症)の症状
入眠障害
寝つきが悪いタイプで不眠症の中では一番多くみられます。
熟眠障害
眠りが浅く、途中で目が覚める、夢ばかり見て寝た気がしないと訴えるタイプで高齢者や慢性的なストレスがある場合に多く見られます。
早朝覚醒
朝早く目が覚め、その後眠れないというタイプで高齢者に多い傾向があります。
治療方法
不眠症の治療はそれぞれの原因に応じて対応する必要があります。まずは生活習慣の改善から試みます。精神障害、身体疾患に伴う不眠は基礎疾患の治療が必要になります。
薬物療法については、必要に応じて睡眠障害のタイプにあった睡眠薬を選択していきます。
強迫性障害
「手を何回洗っても、綺麗になった気がしない」、「戸締りが気になって、何度も確認してしまう」・・・・
ある特定の考えが自分の意思に反して繰り返し浮かび(強迫観念)、それによって引き起こされる不安や恐怖などを打ち消すために、同じ行動を繰り返すことを自分に強いる(強迫行為)、このような症状がよくみられる方は強迫性障害の可能性が考えられます。
病気だと気づかない場合も多い
国内では、どのくらいの割合で強迫性障害の患者さんがいるのかはまだ完全には明らかになっていません。欧米では、精神科外来に通う患者さんのうち9%が強迫性障害であるというデータがありますが、日本の精神科外来では多くても4%前後の報告があるに過ぎません。
ただし、これは強迫性障害になっている方が少ないという意味ではなく、障害を性格の問題だととらえて受診せずにいる方や、精神科を受診することにためらいがあって、日常の不便を我慢している方がいるのではないかと考えられています。
また欧米では 、全人口のうち強迫性障害だと言われている方は1.2%、50~100人に一人の割合といわれており、日本でも同じくらいの割合になると考えられています。
主な症状
「強迫観念」と「強迫行為」の2つの症状があります 。
強迫観念とは、頭から離れない考えのことで、その内容が「不合理」だとわかっていても、頭から追い払うことが出来ません。
強迫行為とは、強迫観念から生まれた不安にかきたてられて行う行為のこと。自分で「やりすぎ」、「無意味」とわかっていても止められません。
不潔恐怖と洗浄
汚れや細菌汚染の恐怖から過剰に手洗い、入浴、洗濯を繰り返す、ドアノブや手すりなど、不潔だと感じるものを恐れて、触れない。
加害恐怖
誰かに危害を加えたかもしれないという不安が心を離れず、新聞やテレビに事件・事故として出ていないか確認したり、警察や周囲の方に確認する。
確認行為
戸締まり、ガス栓、電気器具のスイッチを過剰に確認する(何度も確認する、じっと見張る、指差し確認する、手で触って確認するなど)
儀式行為
自分の決めた手順で物事を行なわないと、恐ろしいことが起きるという不安から、どんな時も同じ方法で仕事や家事をしなくてはならない。
数字へのこだわり
不吉な数字・幸運な数字に、縁起をかつぐというレベルを超えてこだわる。
物の配置、対称性などへのこだわり
物の配置に一定のこだわりがあり、必ずそうなっていないと不安になる。
治療方法
強迫性障害では主に、薬物療法や認知行動療法を組み合わせて治療を行います。
薬物療法では、抗うつ薬としても使用されるSSRIを主に用い、脳の中の神経伝達物質のセロトニンの量を調節します。基本的には、長期間にわたる服薬が必要で、最初は少量から始め、効果を確認しながら薬の量を増やしてくことになります。
また、どのような考えで強迫行為を行ってしまうのかを把握して対処法を考える、認知行動療法も用いて治療を行っていきます。
強迫性障害を日常生活に支障がないレベルまでに治療する事は可能ですが、症状を完全になくすことは難しい病気です。症状が改善したとしても、改善した状態を保つために、日々のストレスをなるべく軽減し、疲れをためないように休息を取ることが大切です。
更年期の気分障害
更年期とは
更年期とは、一般的に閉経を迎える前後の約5年間のことをいいます。日本人女性の平均閉経年齢は約50歳ですので、だいたい45歳~55歳くらいの女性にあたります。
更年期障害
更年期に現れる多種多様な症候群で、器質性変化に相応しない、自律神経失調症を中心とした不定愁訴を主訴とするもの、と定義しています。
更年期は卵巣機能の低下によりエストロゲンの分泌量が減少し心身ともに様々な影響をもたらします。更年期の症状は個人差が大きく、症状がみられる場合を更年期障害といいます。
更年期障害には、月経異常、のぼせ、ほてり、発汗、冷え、動悸、血圧の変化などの身体症状の他に不眠、イライラ、抑うつ気分、不安感など精神症状をもたらす場合があります。
更年期のうつ病
うつ病は、40歳代半ばから閉経までの期間(更年期の前半に当たる時期)に発症しやすいことが指摘されており、更年期障害との鑑別が重要です。
更年期障害と診断された中にうつ病が見逃されている可能性があります。更年期の女性はホルモンバランスの変動以外に子供の自立による喪失感、老年期への移行による不安感、老後の不安等、環境の変化による喪失体験を受けることが多く、それが抑うつ症状を引き起こすことがあると考えられます。
治療方法
当院では更年期の精神の不調に対しての治療を行っています。症状に応じて睡眠薬、抗うつ薬、抗不安薬、漢方薬などで治療していきます。
※ホルモン補充療法は行っておりません。専門医を受診して下さい。